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子どもの育ちは環境がいのち!~保育の環境と環境構成の工夫~

 

CRAYONプロジェクトのCRAYON BOOKにも項目が設定されている「環境と日常生活」。

子どもが概念形成をするためには、十分な環境や食事、睡眠や遊びが必要となってきます。

そこで今回は、これらの中でも「環境」に着目してお話ししようと思います。紬木保育園の環境構成への取り組みもあわせてご紹介します。

 

 

子どもが受ける影響の種類

「運動が得意なのは父親譲りね」「おしゃべり好きなところは母親に似たのかも…」といった話をしたことがある方、耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか。人間は、学力や運動神経、性格、体格など、さまざまなことを遺伝で受け継ぐため、親子間、兄弟間で似ている部分があるというのはよくあることです。しかし、子どもが成長していく上では、遺伝だけではなく、生育環境からも多くの影響を受けているのをご存じでしょうか。

 

子ども達は、二足歩行のように人類が進化の中で獲得してきた要素や、文字や数字のような能力といった歴史の影響を受けるのに加え、周囲の社会文化からも大きな影響をもたらされています。

 

※出典1 図をもとに作成

 

上の図を見ても分かるとおり、子どもの世界は家庭から幼稚園・保育園、○○市、○○県、やがては国(日本)へと広がっていきます。そして、それらの影響は内側にいくほど強くなり、家庭や幼稚園・保育園といった身近な環境がより重要であることが分かります。(※1)

 

保育所保育指針における「保育の環境」

第1章 総則
1 保育所保育に関する基本原則
 保育の環境には、保育士等や子どもなどの人的環境、施設や遊具などの物的環境、更には自然や社会の事象などがある。保育賞は、こうした人、物、場などの環境が相互に関連し合い、子どもの生活が豊かなものとなるよう、次の事項(次章で紹介)に留意しつつ、計画的に環境を構成し、工夫して保育しなければならない。(※2)

 

子どもを取り巻く環境には「人・物・場」があります。

 

●人…友達、保育者、その他職員・地域の人など

●物…遊具、玩具、道具、家具など

●場…保育室、調理室、園庭、園外施設など

 

さらに、環境には、自分ではどうにもならない環境(施設の広さや設備、園外環境など)と、工夫次第で変えられる環境(保育者が環境を見つめ直し、意図的に変えていくことができる環境)の2通りがあります。乳幼児の子ども達の成長にふさわしい保育環境をどのように構成していくかということは、子どもの経験の豊かさに影響を及ぼし、保育の質に深く関わってくるものです。

 

環境構成で留意する4つのポイント

保育所保育指針の中で挙げられている留意するポイントにあわせ、紬木保育園で行っている環境構成をご紹介します。

 

子どもの主体性を育む
子ども自らが環境に関わり、自発的に活動し、様々な経験を積んでいくことができるよう配慮すること。

 

紬木保育園では、保育所保育指針に沿った「子どもの主体性を育てる保育」を実践しています。園にある「物」について、子どもが自分で考え、自分で選び、自分で決められることを大切にし、園生活でのいろいろな場面で主体性を発揮できるような物的環境づくりに力を入れています。例えば遊びに関しては、発達に合わせて主体的に遊べるような玩具や教具、絵本等を準備し、それらを子どもが選んで自ら手に取ることのできる環境になるよう工夫しています。また、さまざまな経験ができるようにするため、遊びが偏らないようにも配慮しています。

 

 

安全で清潔な環境づくり
子どもの活動が豊かに展開されるよう、保育所の設備や環境を整え、保育所の保健的環境や安全の確保などに努めること。

 

子どもが自己を十分に発揮して意欲的に活動するためには、安心感や信頼感の得られる環境であることが重要です。子どもの命を守り、その活動を支えるためにも安全や衛生に留意した環境づくりを心がけています。

園では保育安全計画を策定し、安全点検や避難訓練、職員への研修・講習を実施しています。また、細かいところまで目が届くよう、保育士の人数には国が定めた配置人数+1名を確保し、安全と保育の充実に配慮しています。

 

衛生面では、ウイルス対策として紫外線で殺菌を行える「おもちゃ殺菌保管庫」を導入し、子ども達が毎日手に取るぬいぐるみやブロック、歯ブラシなどの殺菌に使用しています。さらに、施設の隅々に「ナノダイヤモンド触媒」という消毒を専門業者にしていただきました。抗ウイルス作用、抗菌作用、防カビ作用、消臭作用、抗酸化作用の5つの作用に大変優れています。季節性ウイルスに対する不活性化作用は、なんと99.975%!コロナウイルスやインフルエンザなどへの対策もバッチリです。その他衛生面の取り組みについては、保健衛生のページをご参照ください。

 

 

時間や空間の保障
保育室は、温かな親しみとくつろぎの場となるとともに、生き生きと活動できる場となるように配慮すること。

 

子どもの心身の健康と発達を支える上では、一日の生活の中で静と動のバランスがとれている必要があります。分かりやすく言うと、一人でゆったりじっくり活動ができる環境と、思い切り身体を動かせる環境の両方が準備されている必要があるということです。

 

紬木保育園では、絵本を子ども達が自ら選び、一人または少人数でゆっくり読むことができるよう机を設置しています。また、身体を動かすために保育室の広い空間を利用してアスレチックを作ったり、リトミックや体育教室を導入したりして、元気いっぱいに身体を動かしています。

 

 

身近な大人や子どもとの関わり
子どもが人と関わる力を育てていくため、子ども自らが周囲の子どもや大人と関わっていくことができる環境を整えること。

 

子どもは身近な大人や子どもと関わり、影響を受けて育ちます。そのため、紬木保育園の保育計画にも「身近な大人と親しみ関わりを深める中で健康な心と身体を育て、健やかにのびのびと育つ(0歳児)」「身近な大人に温かく見守られながら自立心を育て、人と関わる力を養う(1~4歳児)」という項目を設定しています。また、異年齢保育が盛んなのも小規模保育園ならでは。子どもが自分と異なる年齢の友達と関わり、自分もこうなりたいという憧れを持つことで、活動への意欲や努力が生まれます。小さな成功体験から自己肯定感の向上も促すことができます。

 

そして、幼児期は社会的スキルを身に付けるのに最適な時期です。AIが急速に発達した現代ですが、「人を思いやる」「人に共感する」などといった重要なプロセスは人間にしかできません。よって、AI時代にこそ社会的スキルが必要とされるのです。(※3)

 

 

文化や季節を感じる環境づくり

これまでに挙げたポイントに加え、子どもの豊かな概念の形成に欠かせないのが、文化や季節を感じることのできる環境づくりです。

紬木保育園では、園庭や園前の花壇に花を植えたりプランターで野菜を育てたりといった季節を感じることができる環境をつくっています。また、近隣の公園に出かけていくことで、落ち葉やドングリを拾うなどの活動もできます。

そうして季節を感じる活動をする中で、視覚概念、聴覚概念、感覚概念、言語概念、数概念の形成も意識しています。

 

園で実施している文化的な活動には、毎年冬に行っている発表会、他園と一緒に参加した餅つき大会などがあります。他にも、普段の製作なども文化的な活動に含まれます。このような活動は、創造性や社会性などを育むことにもつながり、子ども達の成長に寄与するものなので、積極的にすすめていきたいものです。

 

取り組みやすい環境構成『壁面装飾』

 

工夫次第で環境は変えられるといっても、いざ始めようとするとなかなか難しいものですよね。そこでおすすめなのが、壁面装飾です。壁面装飾とは、文字どおり壁に施す装飾のことですが、壁に限らず、園内のすべての展示や掲示物を含むものをいいます。比較的取り組みやすく、高い効果も期待できるのが特徴です。

 

一口に壁面装飾といってもさまざまなものがあります。五感や言葉、数字を使って概念形成を促す仕掛け、季節や行事を感じられる文化的概念を育む仕掛け、トイレや手洗いなどの生活の動作を子ども達が確認できる仕掛け、保護者をターゲットにした仕掛けなどです。

 

例えば、保護者をターゲットにした仕掛けには、子どもが製作した作品の展示があります。毎月の製作品を保護者が見える位置に掲示することで、子どもの成長が伝わるほか、子どもとのコミュニケーションのきっかけ作りにもなります。

また、園での生活のねらいや遊びを伝える装飾をして情報を共有することで、保護者への子育てのサポートができることも。園と家庭で一貫した関わりが生まれると、子どもにとっても安定した環境を与えることができるでしょう。(※1)

 

 

【出典】

1:韓昌完(2023年)『誰もが優秀児になれる!CRAYONプロジェクトの実証』さくら舎

2:厚生労働省(2017年)保育所保育指針(平成29年告示)

3:中内玲子(2020年)『シリコンバレー式 世界一の子育て』フローラル出版

 

書籍紹介


誰もが優秀児になれる!

CRAYONプロジェクトの実証

紬木保育園の取り組みも掲載されています。

保護者の方、保育者の方、子どもに関わるすべての方に是非読んでいただきたい1冊です!